2007-01-01から1年間の記事一覧

精進と肉退

私いまから退屈な話を二三並べてみる覚悟だけど、あなたの覚悟はいかがかしら、まあいいわ所詮独白のようなものであるにすぎないからね、本当のところここにあなたは必要ないのかもしれない、でも一人芝居にも裏方さんはいるでしょう、それと同じで、だから…

甘い毒

「つぎ嘘吐いたらあたし蜂蜜のむよ、のんであんたにキスするよ」先日、彼女は髪を黒に戻した。ふわふわのパーマも甘いブラウンも捨てて、ストレートの黒髪ボブ。そして、中身も大分かわった。それもとびきりたちが悪い方に転んでしまったようで、隙あらばそ…

嗅覚と記憶が手を繋ぐ夕暮れ

惰眠からの脱却、瞼を開けたらもう外が薄暗くなっていて驚いた。ぬるま湯のようになったシーツから這い出て私は一度脱いだブラウスに腕を通す。 なんだか性的な夢を見たような気がするのだけれど、記憶が定かでない。先日の余韻がちらついたのかもしれない。…

彼の真空管について

ののこちゃんがピアノを弾いてはいるが、きりくんは外の雨に気をとられていた。 少しばかりずれている彼は、でもののこちゃんのピアノを知覚する音感は持っている。 「きりくんリクエストのショパンじゃないの」 「本当はドビュッシーのほうが好きなんだ」 …

「カーペットの傷みが」

カーペットの傷みが急に気になって気になってどうしようもなくなって、突発的に捨ててしまった。剥き出しのフローリングはなぜかざらざらとしていて、このあとの雑巾がけの手間を考えるとうんざりしてしにたくなったり、した。 やれやれ。雑巾をかけてもざら…

嘘と駆け引きに捧ぐ五首

-唯一の真実、名前言ってみて。忘れたなんて、そんな言い訳、 -汚いものならもういっぱい見たからそろそろ綺麗なものを見せて -真赤なリップを噛めば鉄の味「貧血気味なの」女々しい嘘を -嘘を吐くその口元にくらりする だあれも知らない嘘を頂戴 -名前など…

五本指と五線譜

泣きながらあたしは五線譜を探し求めていた。 探し求める、なんていうと五線譜中毒か何かみたいだが、本当はその逆。 あたしは五線譜が嫌いだ、どうしようもなく嫌いなのだ。五線譜を見るといやな音を思い出して眩暈がする。 ずっと理由がわからなくてくらく…

パーソナルスペース

君は言ったんだ「死にたいな」、ねえほんとうに死にたいの? 鼻で笑うほど切り離されてないし かといって絶望するほど癒着できてないし。選挙権ありません 世論調査うけたことありません だからそこにあたしはいない なのにあたしはそこのなかそう思いながら…

てすさび

あのこはいつも暇だから、手をぱくぱくさせるのです。開いたり閉じたり、 閉じたり開いたり。いつ見てもそのてのひらはからっぽです。ある日、ある人がそのことに気付いて、 あのこの手にそっと、大きな氷を握らせてあげました。 あのこはとても喜んで、やっ…

unis.

「ピックは73ミリがいいな、ぺらぺらなのは飛んでっちゃうし、分厚いのは弦に負けちゃうし」って言いながら、君はエフ・サス・フォーをじゃらりする。 そういえばこの前買ったアルバムはこのコードからはじまるんだったっけ、でも上手にそのイントロが思い出…

堕落

甘やかな嘘に満ちてゆく そんな空気にふたりで酔って 私は間違えたりなんかしない なんてその発想が既に間違い 絡め盗られる指先 とられる とらわれる 嘘

ナイトグライダー

ゆるやかに坂を滑り落ちてゆく、こんがらがっている 滑り落ちている、とはいっても決してマイナスではないのだ、同時にスピードは加速まっすぐ、 飛翔もつれ合って、 卑小 矮小目に見えないぐらい小さくなっていく きらきら光る金平糖のようだったよ、と釣り…

午後のスコール

がらりとベッドの下からマニキュアボックスを引っ張りだす。そういえばもう前に爪を塗ったときから2週間も経っているんでした。こんな風に私のお洒落はいつも爪が甘い。お洒落さんといわれることを一通りやってはみるけれど、同じようにお洒落の一貫で鬱も…

煙が目に染みる

ごろりと寝転んで「ごめんなさい」と君は言った。 「ごめんなさい、でもわたし、あなたが嫌いなの。心の底から嫌いなの」それからばつが悪そうに口元だけで笑って、「真顔でごめんね、冗談じゃなくてごめん」。 「気にしないでくれ、君が吸う煙草は重くてど…