僕らが住むこの星は捨てたもんじゃないでしょ?

完全数はお好きですか。わたしは好きです。

 

完全数は、自身を除く約数の和が自身になる数字のことだ。現在51つが発見されている。

例えば6、6=1+2+3。

例えば28、28=1+2+4+7+14。

その次は496で、その次は……とにかく途方に暮れるような数であることしか覚えていない。

 

さて、今日は完全数の日だ。6と28が隣り合う日だ。完全なのだ、ゆえに当然、わたしの誕生日でもある。

 

そんな歳でもないとわかっていつつ、もうずっと長らくTRAMPOLINE GIRLを聴きながら自分の誕生日を迎えていた。去年、いい加減ガールという歳でもあるまいし、あとはトぶだけでしょ? そう思ってバードメンに変えてみた。踊るロマンの血みどろなんですよ。でも今年、なんだか名残惜しいものがあって、結局、また。揺らいで傷ついて跳ぶんだよ。

 

あ、歌詞に「完全勝利」って入っていることにいま、いま気づいた。ああ、これは曲が呼んでいるのでしょうね、なるほどね。

 

 

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以上を28日に書いて止めていた。土日で海を見に行こうとしたけれど悪天候なので中止してよく眠った。

日暮里から谷中銀座を通って上野に抜けて、随分と大きく葉を広げるようになった蓮を見ながら歩いた。おろしたてのローファーは底がすり減っていないし革がしっかりしているので重たい。情けないような音楽を聴いて帰った。

海には行けなかったけれど、代わりに今年の夏にとびっきりだ、とびっきりに行こうという話。頓挫させたくない、とびっきりに辿り着きたい。

 

 

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わたしの感情はすぐに震える、ワイングラスのふちをなぞったときのように波打つ。そのことは別に構わない、多少息苦しいことがあったとて、鼓膜をぴんと張っておけば美しい音を拾うこともある。見通しのよい聴覚は悪くはない(視覚を曇らすことがあったりもするんだけれどね)。

だけど、これはお願いだ、どうかこのグラスを割らないでくれ。水が激しく震えて小さな嵐のようになることはもう、そのことは別に構わない。だけれどその先、暴力的に凪を、無を、与えられるのか奪われるのか、どちらにせよだ。このグラスを割らないでくれ。

 

今日歩きながらふと思った。君に気を遣っているんじゃない、わたしが嫌な感じを味わいたくないのだ。納得をしたい、どんな通し方があるにせそれぞれが矜恃だろう。

 

 

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頬に触れる湿気を含んだ髪はめちゃくちゃに跳ねている。撫でてくれ、もうめちゃくちゃに。

Happy Birthday to me. まだ生きているね。大丈夫、悪くないだろう。