レモネードでブラウスを煮て

 

難易度高めの知恵の輪に挑んだはいいものの見たことない捻れを前にどうしたらいいのかわからずそのうち諦めてあるいは興味を失って箱の奥にしまいこむという行為を持ってして記憶から追放した経験はありませんか。


ひとの気持ちがわからない。わかったことがない。
共感という下品な行為でわかった気持ちになって、こんなのわかったうちに入らない。ただのミラーリングです。

あなたはabsorbする魔法の鏡。わたしはちょっと大きめの普通の姿見。合わせ鏡の何番目に不吉なものが写るのか覚えてないし興味もないけど、そんな風に深く覗き込むふりして手前に写った自分の姿から目をそらす暇なんてない。

わかるはずもないからわかってみたいって思う。
届かなくても、通じなくても、伝わらなくても、それでも少しくらいは、うんと先のいつかには。

 

無理やり言葉を着せられた感情はいつも窮屈そうにしていて、でもその丈を少しでも少しでも合うようにって調節する気を張る仕草が趣味だし諦めてない。
全然足りてないけどやる、時間も労力もちっとも比例しなくて泣き言ヒーヒー漏らしたいときあるけどやる。

 

ひとの気持ちなんてわからないし、感情とまったく同じ言葉も見つけられない。わかってる。
それでも諦め悪く体温が残り続けるぬるいフローリング。べたついて肌が湿ってくるけど、じゃあやめたってものでもないから。

あなたとって、ひとの心を救うことも壊すことも、たぶんそんなに難しいことじゃない。でもわたしにはそんな鋭い感覚はない。絶対に敵わない悔しいところだな。

 

生まれた意味なんてなくても
出会いに意味なんてなくても
全部は計算で割り出される確率で、それを偶然と呼ぶことはできても奇跡と呼ぶ純粋さは持てないからクダを巻いている。

何も奇跡じゃない。
それでもあなたはわたしを見つけてしまったから。
そこに運命も奇跡もない。言うまでもなく総ては等しくただの偶然、墜落する飛行機は必ず地球上のどこかに落ちる。どこにだってひとはいる。たまたまわたしがここにいる。
それだって昔、飛行機の部品があなたの場所とわたしの場所に散り散りになって降ってきたからと言えるのでしょう。

ただの座標にナンバリングして、でもスカして冷笑するひとも面白くない。シャンパンまで行かなくたっていいけれど、檸檬堂とかレモン・ザ・リッチで乾杯するくらいがいちばん楽しいんじゃないの。

 

ひとの気持ちはわからないけど、少しくらいわかってみたいって思う。だから見ていたい、見つめていたい。注意力散漫でうまく行かないことばかりだけど、それでも重ねればくるくる車輪が回るって予感で風が気持ちいい。

わたしは他の誰にも出来ない特別なことができる。わたしにとってあなたがそうであるように。
この思い違いと確信がわたしをここまで連れてきたし、これからもどこかへ連れてゆく。その座標があなたの居住まいに近いといいなってこっそり思うんだ。

 

ひとの気持ちはわからない
あなたが何を感じているのかさえわかったことがない
これから先も全然わからないかもしれない、っていうかきっとそうこれまで一度もわかったことないから。それなら一生楽しめてお得。あなたは決して知恵の輪じゃない、遠くしまいこんだりしない。うん、絶対ずっと飽きない。

安心して、あるいは絶望して。
わたしは全力を尽くすだけ、尽きないけどね、でも尽くす。全部やる。ぜ、ん、ぶ、や、る。いまのはルビです。

 

簡単に手を離してやらんわ、白けちゃうくらい安っぽいにんげんなりに心も頭も総動員。上手に手を抜く時短レシピが重宝しようともそんな風に接するなんて考えるだけで鳥肌もの、気色悪い。わたしの凶器の種類は内緒、犯行動機も内緒。

気づいたら雨は止んでいるから散歩。ロレアルパリのメイク部門が撤退するんだって。気になっているアイシャドウと口紅があるけど瞼の数も唇の太さも変わっていないから取り敢えず保留した。