(not) my cup of tea


目に映る総てが暗喩、お馴染みの刃物と軟膏、反転の庭。
線をまたげば取り返しつかなくなるってよく知っている。
あなたには理解できてないんじゃないかって不安になる。

言葉で説明できたらわかった気になれるというか、言葉で説明できることこそが理解すなわち理を解すことと言い換えてきたんじゃないかって疑惑。
有史以来たくさんのみんなたちの興味の対象として感情があって、感情に言葉をあてようあてようって結果としてなんとなく理解した気になって。理解した気になっただけだということだけ都合よく忘れてる。
お前らの中に水はない。
真似ごとなんてして気色悪い。
半端に肉に血なんて通して身の毛がよだつ。
金属みたいに素敵でもないし、直視すると頭痛が出るからずっとこうしてる。

心臓を動かしてそれっぽいことして、かわいい、かわいいね。
吐瀉物の欠片さえ渡したくない、卑猥で矮小で総てのなまものたち。
反吐が出る。

不快にするもの総てをどけてくれ、心底気持ち悪いんだ、そんな精神でわたしに触らないでくれ。
とにかくどけてくれ、さもなくばわたしをどうにかしてくれ。
何度でも自分をどうにかした、裁いてきた、真似ごとなんてしてつくづく気色が悪い。
正気にかえると鳥肌が止まらなくなる、ネガポジの視界、よく知っている。頭が痛い。

誰にも触らないで障らないでひとりで生きて儚げな風情で仕舞いたい。誰も彼も注視すると眼がどろどろに融けて眼窩から流れ出す。
こんな怖い場所でどうやって生きてきたの?

未来なんてどこにもない、「愛した未来」なんて過去形だけがぐちゃぐちゃになって腐臭を放っている、成れの果て、よく見える。
それでも腐敗して融解して、その果てにひとひら残るものがあったら美しいよね。
何も残らなくても美しいよね。いらない、捨てる。

ここに何もないってよくわかる。
いま、ここにあるものが総て。何もない。
積んでいけたら素敵だけどね、何もなくたって美しいから。


今日はオールド・イングリッシュ・シープドッグの子犬に触った。断尾されていなくて、撫でる指を甘えるときのにんげんのように甘く噛む不思議ないぬだった。
その手触り、細くてうねるふわふわの毛の感触、いまここにあるのはそれだけ。