はてのないおないたに

 

あなたに背中を向けたのはこの12年余りで、つまり人生で初めてのことだった。常に眼差しの対象だから外すことなど考えもしなかった、それでも背を向けて飛び降りた、流水の中の砂金を掴むくらいの無謀さを持っていたために。ほんの5分余りの出来事。背中を向けた甲斐があった、ちゃんと掴めた。ゆえに今週の日曜日には予定があります、あるんですわたし予定。

 

 

大きなハブに丸呑みにされた数時間後にあんみつを食べた。ハブに吸い取られていくあんみつ、あんみつを媒介するわたし。食べてみたいものがあるんです、上手にやらないと死んでしまうけれど。でも「上手にやらないと死んでしまう」なんて、普通に人生とか生命とかの性質だから何も特別なことじゃない。

 

 

焼肉で汚れる口元を正面から見ていたのは昼、すっかり脂を拭った頃、今度は同じ口元に金属が貫通している。顔にたったひとつ穴が開いただけでどうしてこうも気持ちよくなるんだろうね。享楽的に堕落してあなたにはとても言えないことを全部洗いざらい吐いたっていい。わたしもピアスを開けたいなと思ったけれど何も思いつかなかった。顔面に穴が開いているくらいで肌に絵が描いてあるくらいで排他してくる社会のことが本当によくわからない。そういうルールに否と言いたがる面倒くさいひとをまとめて排他するための踏み絵というなら納得ができる。青しかなくて緑しかなくて、職人が織った傘の美しさを知りました。

 

 

ドライアイスを口の中で転がす生き物を見て、それから鉄板の上で恥を焼いて飲み込んだ。少し淋しくなりかけるのを忘れたがるように固まらない水飴が垂れ続けるから手も口もねばついた。性質としては淋しさのそれと変わらないかもしれなくて、それをお皿においてしばらく忘れたふりをする偽物みたいなふたりの真横で、ガタイのいい男がガタイのいい男の額をはたく音が鈍く聞こえる。麻薬の密売、マネーロンダリング、全部をじゅうじゅう焦がしてゆく鉄板。なんでも食べられます。必要なら媒介します、あんみつみたいに。どうですか?

 

 

タイトなクレイドルに組み込まれてるこれは人外の血を引いていてひととこに留まる頭がないらしい。放浪しているから自分に関係ないでしょって笑って、鼓動を早くすることばかり考えている。