"眼差しの数だけディティールは立ちのぼる"

 

どうもひとに好かれるような文章じゃないから、そちらの眼球こそぐるぐる回転してしまっていますか。唇にあぶら取り紙を挟んで多く塗りすぎてしまった口紅をやさしく剥ぐように、日々の微小な震えをそっと感知して写し取っています。

 

鼓動が三拍子で脈がない。感知できない震えもあるのだと思った。あなたはもうじき死ぬね。付点をつけてつんのめる。こうなるって思ってた? 面倒くさいって思った?

わたしに食い殺されないものが好き、でもその強度がないのならちゃんと手加減するから安心してよ。お墨付きの魔法の鏡としてそれくらいのきょうじはあります。

 

最近の安息日のどこかで、マリアと天使になって受胎告知をする遊びをした。そのときあの大きなおなかを演出していた中身がもう外気に触れて酸素を吸い始めたらしい。毒物のクイーンにおかされてゆくあなたを見るのが楽しみだ。

上野で展示されている毒の中にもちゃんと酸素はあった。「少量なら気付け薬になれるひとだけど」、見ているわたしも陳列されているようで、それはおおむね正しい分類であると思う。そういう話をしたらあたためる塩を頂いた、満月も毒になるのだろうか。寄り添うように隣で光っているのは火星で。

 

よもや発掘されるなんて思わないでしょ、1年半の地層が歪んで笑ってる口元みたいだ。その口元にもあぶら取り紙をそっとあてがう。