粉末の朝

 

左手に掴めそうな海、あなたの髪が茶色に透ける程度の色素量が潮を含んでかさを増してゆく。嘘をついてでもあなたが増えると嬉しい。いないひとの不在さえ愛せる気がして心臓の窓を開け放ってはためくカーテン、けむくじゃらの小さな蜂が迷い込んで大動脈の蜜を吸う。たらりたたりしたたりほたほたのドス赤い蜜の、内緒にしたいと思いながらも舐めて欲しかった。いろいろなところで集めてきた雑味こそがわたしの純度なのだと言って聞かせるその同じ口から、経口摂取であなたを引き受けて、傾斜には挑みたくなる性分だから鼻を撫でたくなったの。もうずっと壊れていてよ、わたしは平板な帯だからあなたの手で捻って欲しい、小さな破壊で踊り続けるためのダンスホールが完成する。ピアスを挿して留めつけた、真新しいシーツに皺をつける朝に永遠を見てもね。図々しいメビウスの帯だから割けても噛み合う。煮詰めた目に知っている街が会いにくる。わたしが帰るのは違う街だけど、どの街にもあなたが薄くまんべんなく存在しますように。