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- 君は言ったんだ「死にたいな」、ねえほんとうに死にたいの?
鼻で笑うほど切り離されてないし
かといって絶望するほど癒着できてないし。
選挙権ありません 世論調査うけたことありません
だからそこにあたしはいない
なのにあたしはそこのなか
そう思いながらあたしの中のサディズムはシャワーの横のコックをぐいと捻る、あたしの中のマゾヒズムは甘んじて熱湯を享受した。あちち。
持ち込んだオーディオから溢れる、音が割れ気味のベースと張りのないドラムを残して、曲はお湯に飲まれて聞こえなくなってしまう。
誰にも聞かれることのなかった音に思いを馳せていたら(空気にはとけたような気がする、音の墓場ってあるのかしら。或いは下水処理場で沈殿している?蛇口を捻って音が聞こえる世界なんて、そんなのがあったら酷く素敵なのだけれど)、ノックの音がした。
そんなに強く叩かないでよ、
ここはこれはあたしの殻だから空だから体から、
なんて考えてる間にも、熱湯は境目をぼやかしてゆく
あたしは厳しい眩暈に遊ばれて、もう一度だけそれを眺む。
鼻で笑わないし、絶望もしない
それはシャワーとは正反対の、つまりあたしはまた砂を噛んでしまったのだった。