「半分に割った赤いリンゴのイビツな方」はわたしが貰うのだけれど、それでも綺麗に割れたほうを笑顔で受け取っておいて違うひとにプレゼントするのはやめてよって思う。わたしはあなたにあげたのだ、他の誰かになんてあげないでよ。
いちばんおいしいところはわたしの口には入らない。わたしのいちばんおいしいところは誰の口にも入らず腐っていってなかったことになる。ひどい腐臭。夏だから。桃を食べた、アメリカンチェリーも食べた。とびきりのかき氷も食べたし炒飯も焼肉も食べた。NumberGirlは解散するしSexyZoneは悲願の初ドームが決まった。初の夏フェスをキメた、明日の今頃には海沿いにいる。
願われている、わたしがここで得点しないときっと世界中が暗く深く淀んで落ち込んだままになる。世界が願っているのがよくわかる。肌がびりびりひりついてる、喉に何かが貼りついて痛いけど、さっきのど飴を買い足したからもう大丈夫。言葉でも胃液でもさっき食べたものでもなんでも吐き出して喉を傷めることだけがわたしのできること。ここには何もなくて、わたしの手の内には何もなくて、細胞中が捻って絞って溢しているだけ、無から有を生み出す手品みたいな顔だけしている。高貴に鼻筋。数ヶ月ぶりにも思える食欲と同時に肌がびっしり荒れて、きっと月経前なのだと思った。暑さと運動で壊れた身体に何もかもが過剰に表示される。のど飴と一緒に化粧水も買った。夜。