BELLA LUNA

 

性別のことを考えているとどうやっても途中でおかしなことになる。

切実な気持ちで身体に触れる、頬に触れた指先がそのまま熱した金属のようにどろりと零れ出すあの感覚。ひとはどんな気持ちでひとに触れるのか。これは性別のはなしではなくて、もしかして性愛の話なのか。性愛、性愛のことなのだとしたらまだわかる気がする。

どうして意味もなく触れようとするだろう、どんな祈りも願いも持たないくせに。

いつもこのことを考えては哀しくなる。

 

長血の女は強い祈りと願いで飛び出して、諫められようとも布の房に触れた。それを羨ましく思う。あるいはグロテスクな無二の存在として嫌悪を向けられるのならそれさえもいいかもしれない。

なんの重きも置かれなかった、それは度外視していい要素として扱われた「自分」。わたしはわたしを無視されたことに怒っているのかもしれない。

わたしであることに意味はない。女の肉体、器、それを有しているという一点で蔑ろにされたこと。自分と肉体を切り離さないと気が狂いそうになる。器を選ばれたこと(褒めらるのとも違う、ただランダムに選ばれただけのこと)に竦む精神、もっとよく見ろ。わたしから何かを吸い出してみろよ。この肉体のせいで、と思う。眼を見て、脳に触れて、でもそれも全部肉体なんだけど。

精神と肉体、こと女という属性の肉体をもっていることはしばしばわたしを混乱させる。決して女である自分のことを嫌いではないはずなのに。

 

顔を見て欲しい。どんな目鼻をして、眉や唇のかたちは。表情から滲む感情。立ち居振る舞いは、そこから見えるわたしの人柄は。美醜ではない、優れているとかいないとかじゃない、ただ、そこには多少は自分があると思える。

まあ長ったらしく書きましたが、まったくの他人やよく知らないひとに反射で浴びせかけられる加害的な性に絡むあれやこれがすっかり怖いという話になります。

 

髪から首、鎖骨、腰、脚、爪先まで全部触ってひとつひとつ愛でて頂かないと死んでしまいそうです。わたしに触れたらあなたの指が金属のように溶けだすよ、好きなかたちに成形して、一緒にキメラになってみるっていうのはどう?

好きなひとと異形になるまで触れ合って、そう、触れた箇所から光り出すから、誰にも見えないおかしな器になりたい。そのためにならわたしは諫められても飛び出してしまうだろう。

 

 

見えない場所だから気づかなかったけれど、ここ最近収まらなかった炎症は想定よりひどく、維持が難しいほどに悪化を促していたようだった。これは残しておきたいものだったけれど、こうなってしまっては仕方がない。でもわたしはこれを自分の身体と思っているから、治癒してまたやるだろう。

 

 

いや違う、「Q.長血の女は何をもってして布の房に触れた? A.信仰」、房の向こうに何を見た? それは、結局器を見ているのと同じことではないか。信仰、わたしが欲しいのはそれじゃない。いや、厳密に言うなら三位一体とか諸々あるけれど門外漢であるしそのあたりを論じたいわけではないから割愛。とにかく信仰されたいわけではない。

引いてくる例を誤ったという例、言葉に酔うと意味がずれる。まあそんなのいつものことなのだけれど。はっと自分の持つ辞書、認知の一端に触れて新鮮な気持ちになったので、これも書いておこうと思った。というよりこれに気づいたから投稿する。ここ、ここでこういうことに思い至るのが自分だ。性がどうとかじゃない、ここ、ここなんだよ。
こういう言葉の端々にそのひとが何を考えて何を考えていないのかが滲む、それに気づくのが好きだ。その対象が自分だとしても。

祈りや願いを掛けて欲しいわけじゃない、何に祈るって何を願うのか、その先に中途に、わたしは存在しうるのか。

 

 

右耳のヘリックスは今日もきらきらしている。

 

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