撹拌棒あんまりガチャガチャさせてはダメ

 

お前が決めるな、と思っている。わたしの感情をお前が決めるな、わたしの感情に勝手に濃淡をつけるな、大したことがないなどと言われる筋合いはひとつもない。わたしは確かにわたしの勝手でわたしのものとしてわたしのためだけに、驚いたり、恐怖を感じたり、恍惚としたり、哀しかったり、嬉しかったり、愛したり夢見たり、憂鬱になったり、超ハッピーになったりしたのだ。それを大袈裟だとか、お前が、決めてくれるな。

 

少なくとも、恐怖を他人に定義されたくないよね。怖かったんだよ、笑い話にするしかなかったけど本当は軽く混乱してた。また不要に強がってしまった、そうしないとあなたたちうんざりした顔で「大袈裟ね」っていうじゃない。

こんな世界も終わりかけっぽいときくらい盛大に物語りたいわけだから、そんなわたしを笑うならそれはお前の感情ですし勝手にどうぞという話。でも、嘘だ虚構だ盛りすぎだなんて蛇足は野暮ったい、それが偽りであると誰がわかると言う、お前が決めるな。

 


翻って、わたしもあなたを決められない。

潔癖症だという彼女は、心情的な清潔もわりと重んじるタイプっぽくて、要するに「お父さんの下着と一緒に洗わないで」的な行動をとるし、わたしもそれに従う必要がある。でも実のところ、そのようにするほうが不潔な気がしてひっそり乗り気ではない、強いこだわりがないので従うけれど。「只強い」と書いて「ただしい」と読ませる当て字のことを思い出すなどしている。
でも、彼女が汚物に感じる嫌悪感を、わたしが決められるはずがない。


たぶん、わたしは確かに大袈裟なんだと思う。だからみんなの感情も尊重しないとって思うのだけど、どうやらみんな、そんないちいち大袈裟に覚悟を持っているわけではないっぽい。言えばあっさりひいてくださったりして、ひとりで固執しててバカみたい、いつも恥ずかしい、顔が赤くて困るのは日焼け止めを塗り忘れてばかりいるからだけじゃないのだろうね。

 

 

 

わたしの倫理観なんて元々とろけているから、正しさが何かなんてとっくにわからないのだけれど、踊っている間は楽しいでしょう。足をもつれさせてあなたと踊りたい、そうやって息を吸って吐いてを見誤らず履行したい。どうせ生きるなら楽しいほうがいい、脳のなかバチバチってなって乱暴なサイン波が頭蓋骨まで揺らすとき特有の指先の震えで連ねるぐちゃぐちゃの線状。わたしは恐れたりしないが、まっすぐ立ち続ける強度があるわけでもない。電車が急停車するとき、ぐんにゃりよろけてしまって結構恥ずかしい思いをするタイプだし、でもそのままステップを踏み続けてやる、ボックスもツーステも踏めないけれど、不安定な足取りで、とろけた倫理観で。


もしかしてこの期に及んでもなお、めちゃくちゃになることを望んでいるのかもしれない。こんな世界はただの混沌とパニック。かきまぜた世界がスクランブルエッグみたいにおいしくいただけないのなら、やっぱり全然ときめかないよ。
せめて美しく消化したい。世界は自分のなかにあるのだ、それは絶対にそうだ、飲み込まれている場合じゃない、戦場も楽園もここにある、大丈夫だ。ひとつも問題はない。
でも、どの園から花を摘んだら?

 


母校のそばに寄って、同窓生と桜並木を歩きながら缶チューハイを飲んだ。道が随分綺麗になっているところも多くて、オリンピックの影響だろうか。2020と印字されたフラッグを見て彼女は笑った。日常をただやるだけでどうしてこんなに消耗するんだろうねと言いながら歩いて、決してわたしたちも機械が得意なわけじゃないのにねって言いながら餃子を食べた。「まずは右図のアイコンをクリックしてアプリケーションを立ち上げてくださいって説明、いる?」、もぐもぐ。

 


正しさなんてわからない、高いところが好きな痴れ者、飛んで火にいる夏の虫、光のほうへかけていくイメージ、通り越して透過して、あるいは煙、空気に溶けて肺に侵入、あなたに向けて飛ばすイメージ。

ぴぴぴ ------------------>> >  >   >    >     >

例えばこんなちゃらけたイメージ。