シュガースポットクラブ


意識が浅瀬に浮上してきて、まず「仰向けじゃん」と思った。目を閉じたまま世界を探ると雨の音がする。少しお腹が痛い気もする。何か飲みたい気もする。もう朝なのか、と思いながら目を開けたら真っ暗で、天井が見えて、近くどこかにあるはずの携帯端末を引き寄せて時刻を見た、2時55分。さすがに早起き過ぎるなと思う。雨の音。身体を温めるのに充分なだけの毛布。肩甲骨が熱い。


そうだった。
珍しく仰向けに大の字になって目を閉じて感覚を辿っていたら、そのまま眠ってしまったらしかった。普段はもっぱらうつ伏せだから、久々にマットレスに押し付けられていた肩甲骨が変に熱くて、ようやく翼でも生えるのだろうかなんて緩んだ頭で考えてから、そうか、何度も触れられた箇所だからか、と気づく。焼きつくように熱い、数時間眠って起きて、雨の音聴いて、疼痛のするような肩甲骨を持て余して、引き続き仰向けのままぼうっとしていた。仰向けだと何もできない、音楽も聴けないし文章も入力できない。雨の音だけ聴いていた。


酷い雨。ニュースによると大変な雨らしい。明ける前から起きていたせいで9時になり10時を回っても部屋の電気は暗いままで、横になったまま思い出したように鍵盤を叩いてはまた横たわるのを繰り返している。気を抜くと指が震えてしまう、透けている。

朝起きていちばんにやることが日記を書くというのはどうにも倒錯していていいな、と思う。そうして昨日の朝書いたものは投稿を怠ったせいでどこかに消えてゆく。睡魔を食べてしまったので致し方のないことだったのです。どうせ明るい内容じゃなかった、ただ投稿をしないということは手元に残り続けるということなので、そのうち嫌になったら投稿して捨ててしまおう。そう、書いた時点でもうさほどの興味がない、どうあがいたって掃き溜めにしかならない。掃き溜め、破棄駄目?という古い踏韻を用いるまでもなく。

 


脳は精神みたいな顔してるけどどうせ肉体なわけで、やってることは変わらない。だったら別に、どの角度でどうやったって同じことだよね。とかいって甘ったるさで吐いてる、そうしないと重たくて動けない。雨が頭に染みて思考ができない、音楽を聴き流している。

 

先日までやっていた無印良品週間はあまり活用できなかったけれど、それでも勤務先にストックしている分のスープだけは買い足してロッカーに詰めてある。フリーズドライのスープ大好き、いろいろ飲んでみたけど結局好きな種類ってそんなに多くない。テールスープがあるのは非常に優秀だなと思うし、あれおいしくて本当に好き。また素知らぬ顔でデスクで飲んでやる、そういう遊びがわたしは大好き。煙草吸ったことないですよって顔してるけど本当はいま鞄のなかに入ってる、コンドームみたいなパッケージのやつ。ひとに会わないと煙草も吸わない、誰かと一緒じゃなきゃ吸いたいとも思わない。そういう遊びがわたしは大好き。

 


雨が上がったので身体が軽い、腹痛もなんだか取れた気がする。部屋には手つかずの歌集が数冊もあって本当に幸せだと思う。鞄の中にはいつもの詩集が入っていて、わたしはいつもの詩を読んでいた。もっと詩集を買い足したいのに新宿紀伊國屋書店は閉まっている。世界を締め切って詩ばかりを読んでおかしくなれるなら本望で、いつだって一突きしてくれる言葉を探している気もするし、もうそういう言葉に出会っている気もする。心臓がいくつあっても足りないし、結局のところひとつしかないのにまだ止まっていない。眠れないときに聴く雨の音は頭に響くから得意じゃない、ずっと続いていた音が止んで、今更頭が痛かったことがわかった。

 


別にいつまでだって書いていられるよ。サニーデイのセツナのPVの「ああ、別に何回でもいいよ」が大好きなのだけれど、つまりあの感じでずっと書いていたい。次があるならダンスをやりたいなって数年前から思っていて、あれってほとんど音楽に近い。わたしは音楽になりたい。

 

遅いよって呟いたの聞こえてたけどわたしはそうは思わないから無視をしてしまった。いつだって今が最高にベスト、心からそう思う。いつも風がよく見えるし聴こえる。痺れているけれど爪先の神経まで澄み切っている。あるべきところに整っているのを感じる。雨が止めばどうってことはない。春はどうにも憂鬱に近いぬるったさがあるから、水気を感じるとぬかるんでしまう。空港も大きな水も大差がない。鏡ってたしかに呪術的だけど別に大した意味なんてなくって、大した意味なんてないから言葉でずっと遊んでる、「ああ、別に何回でもいいよ」。

 

電話をしていた、「どこか行きたい」「飽きた」という話ばかりで少し疲れてしまった。本を読んでどこかに行こう、わたしはそれでどこにだって行ける。どうしたって一貫性が持てない、酷薄なのだ。

 


なんとなくARTを聴いていて、だるい日にはちょうどいいな。頭が1mmも動かない。君はあまりに無知で軽薄であばずれだ。そしてニーナの為にを聴いて心が抜け落ちるターンまでがセットです。
それはそれとして、この曲のこのライブ映像のギターは異様に格好良くて好き。もうこれ本当にベスト。