みつけてしまった

 

水星に夜明けが来てわたしの言葉は湿りはじめる。赤を纏って色を放つ。唇を使って会話をする。そんな目で見るなよ。

わたしはちゃんと知っていて、知っていた通りになる。だから何も疑う必要がないのよ。

自分の身体に固有の匂いがあったらどうだろうと思って、香水を持ってみようかと思った。正確には少しだけ持っているけれど、もっと自分に沿わせたものを。少し香水屋を見て回る。基本的に香りが強いものが苦手だから逃げたくなってしまう。靴屋がいちばん辛い。

朧げなイメージはあるけれど、目に見えないわたしから立ち上るものを自分で選ぶのは難しい。

あなたの赤はわたしの青であることを否定できない世界で、自認する香りを選んでもどう見られるかはまったくわからない。

少なくとも、綿菓子の匂いがするような甘ったるくてかわいい背の低くて柔らかい女の子のような香りは似合わないってことはわかる。骨と肉と血、張り巡らされた細胞。香水をつけずとも、わたしはそもそもクリームだから。

 

梅雨に入って雨がこめかみを撃ちぬくから毎日がブレンダ・スペンサーです。だけれど月曜日は嫌いじゃない、毎日意識が消失する。意味が不明なくらい突然日々を卒倒して過ごしている、頭が痛くてずっと眠たい。雨の音は好き、たぶん貧血っぽい。そういえばこの間採血をして5本分くらい抜いたけれど、その結果を取りに行けていない。ついでに背を測ったら思っていたより高かった。そうこなくっちゃ。

 

頭の先から足の指の先、毛先、わたしの先端、総ての尖った部分。ぞっとするほど向けてみせる、傾けてみせる。