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あとは何をしよう。6時間以上かけてやることがそんなことかよって呆れられるかもしれないけれど、誰がにおうのかわからないなら片っ端からやるのがよいって思ったの。たくさん切って随分軽くなった。歯切れよく完全数

死にかけのもぐらやねずみの死体を持ってくる猫ってこんな気分なのかなあと思う。ばいばいもうわからなくなったみんなたち。取り返しなんてつかなくていい、つかないから全部楽しい。

 

昨日は土手にある高校に宇宙に行き来する乗り物が着陸する空港ができる夢を見た。その高校はどうやら下宿があるみたいだけれど、それとは別に空港には雑魚寝する部屋があって、女子も男子も夜になるとこぞって宇宙にいろいろな景色を見に行き、帰ってくるとその雑魚寝部屋で話したり眠ったりして、翌日の学校ではみんなうとついていた。
くだを巻く部屋では空港のひとが、今日そら行きたいひと挙手してーって気軽な感じで聞いていて、わたしも何度も空に行った。
最後には大きな火を見た。全部燃えそう、きっといつか全部燃えるってわかった。

 

工事の音がする、いつもどこかから工事の音がする。これは住宅街の音なんだと思う、真昼。きっとわたしがいなくなっていることに多くのひとは気づかないのだろう。ふふ。ここにも少し細工をした。意外と簡単にできた。

 


わたしはもっと孤独で淋しい場所に追い込まれたほうがいいのだろう。

簡単なことだよ、全部捨てる覚悟ならわたしのほうこそしているもの。同じだけちゃんと失ってみせる。

 

自分の怖いところ、あんまり好きじゃないんだ。もっと獰猛にできてしまう。

小学生の頃、重松清のエイジを読んだ。キレる若者が提示されるモチーフとして繰り返される中で、終盤、学生だった主人公は授業を抜け出して世界から「切れて」ゆく。どんどん自由になる、その感覚が当時気持ちよくて、そのシーンから先は何度も読んだ。

身体に繋がっているこのチューブも、皮膚も血管もなんでも切れるよ。自由はちっとも自由じゃないなんて事実を全身に浴びて育った、そこに伴う責任を負えて初めて自由になるのだ。それを外して自由という言葉を用いるにんげんはそもそも前提が合わない。

 

どう生きるかはわたしが決める、6月だしね。毎日毎日完全数がつく1ヶ月だもの、とても素敵なことだよね。
そこにどんな不健全な心身があろうとも、ここにどんな不健全な心身があろうとも。わたしはどっちも愛しているから。

もっともっと身体を軽くしたい、あらゆるものから切れてゆきたい、って既にわりとかなり切れてる状態なのだけれども。あらゆるものを無視している、社会的にもきれている。おかしいな。

きれてないのは頭だけ、冴えてないのは指先だけ、嘔吐してって胃がうねっている、もっと軽くなれるみたい。


安心して、わたしもちゃんと苦しんでいて、ちっとも幸せじゃないから。それでいてきちんと楽しく過ごそうとしているし、少しでも綺麗な姿勢で歩きたいと思ってる。
決して言いなりになったわけじゃないって10回手に書いて飲んでね。


軽蔑した? されるんだろうな、されなかった試しがないもの。でもそれならやっぱりこの期に及んでナメられてるって思う。

今日も、今だって革でできた指輪をお守り代わりにずっとはめていて、これがどこに繋がっていないとしても、わたしは繋がっていると信じ抜けるし心臓だって差し上げた。立ち上がるよ、血を流しながらチューブぶらさげながらそこまで行く。

 

 

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去年の3月末頃、ある短歌が急に頭に浮かんできて、そのとき自分の心の帯びた性質を真から理解した。このあとどうなるのか全然わからなかったけれど、だけどどうしようもなくわかってしまったのだ。

 

こころからひとを愛してしまった、と触角をふるわせるおとうと

 

あなたはいつでももっとわたしをよくできる。わたしはそれにずっと賭けてる。甘く見ないで。あなたは自分で思うほど小器用じゃないし、わたしはあなたの胸を打つために書いているんじゃない、あなたのためだけに生きてない、自分のためにも生きている。それが循環して結局あなたのためになるって思うから。あなたもやって。全うして。

わたしの話すことをよく聞いて、マスクを外して。お願いだからよく見て、聞いて、聞かせて。歌って。