汝、意思あらば、可能ならん

 

身の回りからひとが欠けてゆくような心地を覚えている、今日は眠る同居人に声を掛けてから家を出た。帰る頃にはもう違う土地での生活を始めようとしているだろう。

 

出生時のホロスコープによれば、わたしは火と風の要素が少ない。でも唯一ひとつだけ火の要素を持っている天体がある、火星だ。それもよりにもよって牡羊座の火。君まで戦えと言うのか、どこまでも戦えと宇宙たちさえもがうるさい。守るためにも戦え、周到に用意したって戦え。戦え何を人生を戦え。

 

最前列だったから配信では自分が大いに映り込んでいるらしくてちょっと恥ずかしい、少しSNSで調べたらたくさんの自分の後頭部が発見された。

 

 

見ているだけで涙が出てしまう身体表現というものがあって、わたしにとってそれは町田樹の作品なのだけれど、彼が選手を引退してからのプロ活動の主軸のひとつと言えようPIWでのプログラムがBlu-rayにて映像化するとの報。嬉しくてたくさん拍手した。彼の身体は讃歌そのものに見える、最後に残したプログラム、「人間の証明」も凄まじかった(でもこれは映像化されない)。苦悩と讃歌、それでも生きる姿。彼が身体で表現しようとするものはとにかくひどく心を打つ。

町田樹氏が好きだな、としみじみ思う。スケートリンクまで見に行ったことは2回しかないが、それでも2回見られてよかった。引退する最後の最後の背中を見ることができてよかったな、たった2年前だ。もっとうんと経った気がしている。だけれど教職・研究職は天職だと言う姿を見られてよかったし、堂々とした話しぶりやわかりやすい言葉選びでの講演は素直にとても面白かった。

好きな作品はたくさんあるけれど、なんだかんだでいちばん多く見たのは2014年世界選手権SPのエデンの東。この3分余りは奇跡だもの、もう無理だ……となったときには必ず見ることにしている。美しい背筋に見る表現の歓び。動画サイトの引用では粗くて見えないけれど、氷を撫でるときや動きを止めるとき、彼は微笑んでさえいる。それを見るたびに胸がいっぱいになる。


 

 

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少し前に悪趣味だと悪態をついたクナイプのハンドクリームの「きっとうまくいくよ」を見ては俯いている。一方でダサい和訳よなあとも思っている。Everything will be fine、まあ言いたいことはわかるけれど。そしてわたしはからきし英語がわからないから正直訳としての巧拙も正確にはわかっていないけれど。テディベアが抱き合っている写真の下に添える文言としてイカしているのかいないのか、ちょっと判断できない。

 

 

世界はそれでも回っている、いやわたしが回している。絶対に振り落とされてやるものかよという意地もある、わたしはウルトラ格好いいからね。イルミネーションがきらきら光っているのは含水率が高いから。ぐじゅぐじゅ乱反射して全部とっても綺麗で憎たらしい。それでもわたしはハイパー格好いいからね、あなたの胸を飾るものをいつだって探しているし、わたしの胸を裂けばキラキラしたものが汚泥のように堰を切って溢れ出すだろう。