ソルトミントカルトキルト(カルキ抜きのうた)

 

それでもわたしはやっぱりそこをひとつも疑っていなくて、神様にはできない内緒を舌先に乗せて絡ませた。口移しで飲んだ水がおいしくて瞼の内側がちかちかした布が隠した太陽の奥。おんなじように結んで、違う結び目ができあがるから引っ掛けて遊ぶたびに掠れた声が鳴る。拍子は取れないけれど心臓の音を聴きたかった。どんな祈りもちんけに見える、あの結び目の前では。

うん、わかる。

致命的にいいことしか起こり続けない世界にいて、安心したら死ぬから死ぬ気で走る、どう足掻いたって死ぬ。こんな安心で腐ってたまるかよ、とにかくギラギラとぶつかるしかない。防御じゃ勝てない、必要ならリングに上がるハラはキメた。もっと追い込みたい。最低でも追い詰められない程度の速さで走るから。

屍累々の世界にいたって猛スピードで走ればぐるんぐるんの色がきっと素敵なマーブルになるよ。いまは大きな大きな花々の生首の中から何本か抜き取って即席の花束を作ったの日当として拝借したのを飾っていて、そう、きっと混ぜたときの視界は大差なく色とりどり。戦場も楽園もステップ踏んで駆けてゆく。

 

わたしは今日もわたしでいる、でも昨日もわたしでいた証明はないし明日も自分でいる確証はない。連続とか断続とか小難しい定義を考えるほど暇じゃないから「わたし」と呼んでいるこれ、このひとが同一人物かなんてわからないよ、という叙述トリックを毎度仕掛ける、闘魚の尾ひれ。

わたしは今日いまこここの瞬間にしかいなくて毎秒死に絶えてゆく。雲のかたちや温度湿度風向きと同じように、移ろっては毎秒存在してみている。そして眠る。行き倒れた泥の塊のように意識を深く沈めて、見ている側が不安で起こしたくなるような眠り方をするらしい。眼差しがあると嬉しい、そしてひとり乗り用の泥舟として漕ぎ出す夏至の夜半を迎えている。短い夜の内側にも塩を塗ってスノースタイル、水分だけじゃ足りないのさ。熱射病には気をつけてね。

 

 

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