9もしくは11連鎖

 

手探りの身振りでどろりと眠り淋漓淋漓と血ほとばしり、ひとり、しほたり。

 

 

漫然と生きており特に気持ちよくはない毎日、コンボの決まらないパズルゲームに似ている。などと書き始めて初めて、なるほど確かにそんな感じだなと思う。

気持ちよくないが、まったく消えないわけでもない。降ってくる新たなピースの量と上手に四つ並べて消える量がちょうど同じぐらいだから、気持ちよくもなれずゲームオーバーにもなれずだらだら続いている(本当は「続けている」)日々だ。

 

「えいっ」「えいっ」「えいっ」の連続。鎖、解けっ放し。そんなお粗末なプレイなのでスコアもいまいちで、結構埋まりつつあるゲーム画面の、上部のスペースでちょこまかと新しく落ちてくる分を回転させたりして、また降らせて。

だから、たまに「ファイヤー!」「アイスストーム!」くらいまで聞こえるとわくわくしてしまう。暗澹とした視界に閃光が走って、ここから世界が変わる可能性を思う。光が切り裂く! ああ手垢まみれのイメージ!! でもそれってつまり、多くのひとが掴みかけて落としたってこと。さあ走れ、もっと遠くまでさあっと行け。
「ダイアキュート!」「ブレインダムド!」もう目なんてぐるぐるしちゃって、頭なんてちかちかしちゃって、息も絶え絶えで、とどめをくれ、もっと気持ちよくしてくれ、全然足りないよ、もはや全然足りない。脳波ぐちゃぐちゃになっちゃって、一生戻れなくなってしまいたい、全部が変わるんだ、「ジュゲム!」全部を変えるんだ、少し頭を使えば冴えた毎日になるって知っている。どうして知っている? そんな日々を送ったことがあったとでも? うるさいなあもう、いいから殴って、もしくは殴らせてよ、「えいっ」、ほら、気が逸れたからそうなる。遠ざかる「ばよえ~ん」、光など消え失せ、また闇が壁となって立ちはだかっている。それを殴るのだ、殴って扉を開くのだ、「えいっ」「えいっ」「えいっ」、そのうちなんで叩いているのかまた何もわからなくなる。振出しに戻る。だからつまり、こんな毎日。「ばたんきゅー」さえできない毎日。本当は「ばよえ~ん」が出たからって気持ちよくなって終わるわけではないってわかっているのだ。それでも壁殴りは漫然と続く、中盤に続く、どこから後半なのかもわからぬままに。神のまにまに、御心のままに

 

なおこの記事は、ぷよぷよ、アルル、連鎖、台詞、ばよえ~ん、ばたんきゅー、といったワードをGoogleで検索し作成されました。

 


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すぐ話が脱線するので、肝要なのは1行目に書いてあることですし、書いておくことです。


切り分けきれないぶよぶよした腫れぼったい日常に少しの傷をつけるのは、例えば冒頭のような意味を持たない言葉遊びであったりする。意味は持たないが、連なる喜びがある。手拍子をするみたく言葉がほたほた落ちてくるとき、わたしの世界が明晰になる予感にくすぐられる。

結局のところ、言葉を並べる遊びを好んでいる一方で、あんまり上手にできない。だけど今日はあんな風に並べて楽しかったから、これはそういう日記です。
ちょこっとの連鎖が続くとすぐ調子に乗っちゃって、このまま書けるのではないかと思うけれど、実際書こうとすれば真っ白だ。ゆっくりとリズムとや勘を洗い流してしまった日常は、やっぱり重たいものに見える。昨日と今日と明日を分けるため、今日のわたしはそういう大義名分で文章が書きたいよ。

 


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ところで最近寝不足だ。まめに書いているつもりでまた数ヶ月開いたので、どの幅を指して最近と呼ぶかは難しいところですが、ここでは幅の狭めの、10日程度を指します。
毎日20分ほど昼寝をしているのだけれど、そこで見る夢があまり見ない質感のものになって戸惑っている。短いイメージがぷちぷちと連なっていて、コラージュというよりもザッピングに近い。

 

今日の分、思い出せるだろうか。
イメージ。吹き抜けになっている建物の高くて長い一本のエスカレーターに乗っている途中で何かを落としてしまい、取りに戻ることを思う。
イメージ。精液の入った口の縛ってあるコンドームを路地裏に捨てた、数歩進んで振り向くと通りがかったひとが怪訝な顔でそれを眺めていたのでちょっと笑う。
……ふたつしか出てこないな。ちなみに昨日は現在育児をしているであろう先輩が出てきたが、それ以外は忘れた。あまり思い出せるものではないのかもしれない。

 

夢のなかで、わたしは眠っていることをわかっていない。場面が転換していることもわかっていない。ただ途中で身体、これは実際に横たわっている肉体のこと、身体の感覚がうっすらと立ち上る。「接地している」という具体的な体勢までわからないけれど、なしている体勢との不一致を覚えるのか、なにかおかしいと勘づく。
寝相を変えていたりするのだろうか、ときたまその身体の違和感をきっかけに一気に引き上げられるような感覚、「あれ、いま、わたし、ねむっている?」。でもすぐに眠りの浅瀬に引き込まれて、またあらゆるイメージを跨いで歩く。
そうやって何度か浮いたり沈んだりしているなかで、眠っているのに、「これが眠っている間に情報を整理するのっていうことか」なんてゆるい思考が始まって、思考そのものが夢じみる。
「もしかして、ねむりすぎてる、かのうせい」と思い立ってようやく、自分が眠っていたことを思い出す。「現実」とかいうこことは違うレイヤーに日常があることに気づく、最低限だけ覚醒させて、違うレイヤーに置いてある身体を使って傍らのiPhoneで時間を確認する。まだ眠りはじめてから10分程度、そして眠りに落ちる。

この、ふたつのレイヤーを行ったり来たりする感じ、うすら輪郭を帯びるような感覚が新鮮でならない。莫大なイメージをたった20分でこなす別の心身を有しているのはわたしではなく脳だ。全部脳がぐるぐる回って何かを処理している過程であることがなぜだか理解できる。


きっと寝不足だから、こんなまどろみでも寸暇を惜しんで脳が働く。脳の仕組みというものはどうなっているのだろう、わたしには全くわからない。それこそレイヤーが違うのだろうか、だとすればいま働かせていると思い込んでいるこの脳の本性は一体どんな感じ? あと、精液の入った口の縛ってあるコンドームのイメージで処理したものは何?