押し込めば鉄の砂糖味

もうみんなが忘れている「令和初」の薄汚れたたすきを貰ったエイプリルフールはしょぼくれて、気弱な顔をしていた。ちょっと可哀相だったけれど、普段から嘘ばかりついているわたしは、努めて誠実に4月1日を過ごした。こうやってあべこべに過ごすことによってわたしの日頃の虚構はより虚構として強固になり(口に出したら噛みそうな音だ)、おまけに許されるような気がする。それに嘘をつきたい相手もいない、わたしの日常はきわめて淡々と過ぎる。


唇は淋しがって、いつものように嘘を言いたがったけれど、グッと一の字に結ばれ続けていてくれたので、ご褒美にミント味のリップスクラブを塗りました、そしていまこれをタイピングしている。もちろんスクラブは紅差し指で取った、砂糖でできているジャリジャリを唇にのせて滲む甘さを舌先でつつくときにだけ、はにかんでしまう脳の部位がある。


震えるほど息を詰めて、言葉を煮詰めて沸騰させて失ってしまったのが2月だった。焦げたジャムみたく。3月には加熱しようとして水に浸したところで途方に暮れた言葉をそのままぶちまけて、投げあって過ごした。焦げてこびりついた2月の言葉の気持ちが、わたしにはわからない。でも、きっと彼らの復讐のような気がしている。脅かしてしまった言葉たち、ごめんなさい。安寧を奪いたかったわけではなかったの。


b.の言葉を引用して曰く、「君は嘘つきすぎて ついていることにも気付いてなくて」。その言葉に脅かされている間は誠実という言葉の意味がわかるはずだろうと、いつもこわごわ確かめて、安心して、傷ついた顔をしている。


令和を唯一未だ知らなかった4月も侵食されてゆく。だからつまり、あなたの誕生日であるところの今日を令和が食べるのは初めてですね。
「ハッピーバースデイ」、わたしはそれを、ここに書きつけたいと思う。ずっと自分を連ねてきたここに、目を細めて見つめてくれたここに、たしかに書きつけたいと思う。どう転んだって恐れるに足りない、「傷一つ何でも無い」。

不格好な言葉を並べて生きている、これからもでたらめに。単純な仕組みで運営される紅差し指でsavexです。スクラブももうそろそろ乾いてしまう、洗い流したらみがきたての唇にsavex塗って眠るという段取りで、わたしは投稿ボタンを押すのだ。これがわたしの誠意だと信じて、ありったけの祝福とともに。