乱暴と自宅待機


尖りきっている最先端であるところのわたしは誰よりも先駆けて自宅謹慎を食らったため、メールしか見られないような軟弱なWi-Fiを巡らせたパソコンを立ち上げてはうとうとして過ごしていた。最近朝までぶっ続けで眠れる日がほとんどないのだけれど、今日はまたぶっ続けで起きていられない日だ。たくさんの夢を見た、嬉しい連絡をもらう夢、自室と職場が繋がっていてそこにぴょこんっと出勤する夢、知らない男に乱暴をされる夢。
乱暴の内容は、暴力というよりセックスで、抵抗できないまま、といった感じ。セックスのことを乱暴と呼ぶのはあまり好きではないのだけど、「乱暴」という言葉で表すべき性行為だったように思う。最近また乱暴のことを考えていたからかもしれない。

 

女性に乱暴を働きたいと思うことは一切ないのだけれど、たったひとりだけ例外がいて、最近、また彼女に乱暴をすることを考えていた。背が高めのわりに体重は45kgくらい、ふらふら歩いてはところかまわず倒れていて、重力に勝てないからほとんどベッドに伏している、不健康で、黒髪のボブ。いつも何かを考えてはやたらと痛がり泣いていて、愛するとか愛されるとか憂鬱とかセックスとか母性とか許容とか思念とかで身も蓋もない、現実をやってゆけそうにないどうにも甘ったるい頭の女。つまり10代の自分なんだけど。

再度になるが、女性に対して乱暴を働きたいと思うことは一切ない。でもこの女だけは別だ、どういうことか、とにかく別なのだ。わたしのなかの男が、あるいは女がそう言っている。
まず絶望をさせたい。目隠しをして殴りたい。あと正常位が愛だと思っていそうなところとかムカつくから、細い腰ひっつかんで後背位で肋骨が折れて心臓が床に落ちるまでハメてやりたい。その背中を踏みつけたいし、大きい声で泣き喚いてたくさんの疑問を投げて欲しい、全部まるっと無視するために。言葉のひとつもかけてやるものか、これが理不尽な乱暴であるということだけを明示したい。そこにはわたししかいないので当然助けなどこない。そして、最後の最後にめちゃくちゃ甘やかしたい。泣き止むまで抱きしめたいし温かいミルクをいれてあげたい、身体を洗ってあげたいし、洗いたてのシーツに寝かしつけて眠るまで頭を撫でてあげたい。この世の優しさの総てを束ねたもので無責任に愛したい。


この欲求はなんだろうか、と考えている。ナルシシズムというには彼女の顔が見えない、性欲と言うには興奮が薄い。加虐趣味もない、はずだ。あるいは自傷行為なのだろうか、そうであったところでとにかくわたしに害がないし、いくら考えてもいまいちピンとこない。ただ彼女に乱暴がしたい。言い換えれば、できればこの女以外の何者にも、乱暴をせずに生きてゆきたい。しかし生きることは酸素の奪い合いに他ならないからそんなことは不可能だ、ああもどかしい、この女に乱暴でもしよう。


でももし、この女がわたしのことを許したら? そうなったらことは大変で、オセロはぱたぱたとひっくり返ってしまう。だから彼女が確実に絶望するように、もっと手酷いことを画策する必要がある。だから結局、何度も乱暴のことを考えてしまう。わたしはこの女を所有しているのだし、この女は死ぬまで絶対わたしから逃げない。実に素晴らしい。


夢見が悪いとこういうことになる、たぶん今日はもうろくな頭にならないでしょう。数日前「甘くかどわかして乱暴をしたい」とタイトルをつけたときもこんなことを考えていたはずで、とにかく女というのは手に余る。手に余るが確かに所有している、一蓮托生、本当、実に素晴らしいことだよ。

 

 

これは「SEXと愛のイメージを」、です。

「使えねえ偽善者。」