目銅食

 

ひとが怖い。関わる相手はさほど選ばないが心を開く相手はかなり選ぶ。そして傷つく。門扉はまた堅く。音楽を聴く、音楽もわたしを傷つけないこともないけれどよく響く。色を見る、言葉搔き集めたくなる。ひとは美しいと思う。忘れる、忘れて門扉が緩む。いらっしゃい、誰でもどうぞ。関わる相手はさほど選ばないし、服を脱がせる相手もさほど選ばない。ねえ話を聞かせてよ、もっとあなたの見た美しいものの話をして、わたしに教えて、わたしは自分の見てきた美しいものの話をいまから一生かけてするからね、一生そういう普通を過ごそうよ。心を開いたつもりはないが、美しいものが零れ出してきた裂け目は心に繋がっている。もっと話そう、ねえもっと。そして傷つく。二度と恋なんてするものか。

SPANK HAPPY2期のサブスクが解禁された。これで誰でも気軽に「普通の恋」を聴くことができるようになったというわけ。普通の恋がしたい、普通の恋をしてみたい。普通に手を繋いで普通のキスをして泣いたり笑ったりしたい、普通に抱き合って甘え合って喧嘩して、どこにでもある誰にでもあるその普通。普通の恋。ありきたりなつまらない普通の恋。そして普通に傷ついて、また音楽を。怖いからと接するのをやめるのは面白くないのでやめてないだけで、とはいえわたしはひとりでいつでも完璧でばっちりで、どんな半球も求めていない。そうであってくれ、そうなれ、と昔から自分に何度も強く言い聞かせている。球が転がり続けるなんて想定していなかった、まあロックンロールということ。