みなそこふるゆきなぎのはて

 

心臓が身体中を揺らしているのがわかる

眠たくて肌が痛くて花粉が来ているっていうのもわかる

心臓が動いている、生きているって思う、これはわかったことではない

鼻のかみすぎでざらざらしていることはわかる、望むならあなたも触って確かめることができる

歯の根が合わないから寒いのかもしれない、実際のわたしはお風呂上がりで寒さからは遠いところにいるがこうやって夢中になっているうちに湯冷めをする可能性があるが今のところは可能性にとどまっている

こんな文章を書いている場合ではない、と思う 本当に?

叫びたいのは心臓が身体中を揺らしていてその振動に酔っていることだけ、でも誰にもわからない、し、もしかしなくとも誰にも等しいことだ。

誰にも伝えられない無力さで歯の根が合わない、誰かに伝えたい、誰に? 何を?

誰にもあげない、絶対にあげない、この焦燥も原因のわからない涙も、これは自分だけで守らなくてはいけない。これをひとに守らせたらいけない。だから伝えてはいけない。違う、伝わらないのだから伝え続けてもいい。そういう選択肢がいつも眼前にあって、何度も掴み取ってきたフラッグだ。
こんな、たかが肌一枚で。皮膚の内側以外は全部世界だ。そして皮膚の内側さえも。この世界に世界以外のものってないの? 叫ぶように血が熱を帯びてゆく、わたしがひとりで悪酔いしてゆく。世界が口を開くときわたしの口も大きく開く、ア と発声しようとして空気を押し出すか否かの一瞬、どこにでもどこまでも深く繋がってゆける可能性が示唆される。吐き出すか飲み込むかの選択をいつもうまくできなくて、過呼吸が世界を混ぜ返してゆく。混濁する世界はそのままわたしの意識だ、見えますか、いずれ凪いで澄んで狂乱が遠くなるまでの行きつ戻りつに、いまここで話しているわたしはゆっくり殺される。毎秒わたしが死滅してゆく。あなたはわたしではない。わたしはあなたを置いてゆく。「愛している、死んでくれ」、この暴力的なひとことを言うためにあなたと生きたいわけじゃない。