ぱんく!かかと!ぱんく!

 

宮本浩次冬の花を聴きながら「あなたは太陽 わたしは月」という一節に気づいて喉を鳴らした。「輝く太陽はオレのもので きらめく月はそうお前のナミダ」とはエレファントカシマシの風に吹かれての一節で、こういう対比を見つけると弱ってしまう。静かに舌の上で溶かし続けて黙っていた、充分味わったからようやく書ける。

 

嫌なにおいがする。目を閉じたい、だめ、だめだよ、たこいとくらいきつくたしなめるよ、刮目して。たこいとくらいきつくだきしめてよ、何も見ないで。何ひとつ。みにくい、硝煙が染みるせい。いたい、みにくい。

 

いやになるほどの日常を飲まされている、好んで飲んで生きている変な生態系ともいえる。だって死んでない。ホメオスタシスによってわたしの手足は今日も一対を保っているけれども、この辺おいおい圧勝してゆく予定でそのときには肋骨を一組増やしたい。そうすればきっと心臓を落とさないで済む、心臓がある程度の大きさを有した個体であり続ければの話だけれど。

 

2年前の4月頭に行った場所に偶然にも再訪した、正確に言えば同じ駐車場に入った。あのときは桜を見に行った、今回は美術館に。チェーン店だから気づかなかったけれど、桜を見に行ったあとに入ったお店と、美術館に向かう前に入ったお店が同じ店舗だった。あの4月唯一のまともに摂った食事だった。鮮やかに思い出せる。道中の車の中で交わした会話と、車を降りてから起きたこと、びっくりしてコンビニでチューハイを買って駅前で飲んでいたこと。今回は車窓から見える梅が綺麗だった、今週末は梅を見に行こうか。

明星という種類の梅の木があってね、知ってる? わざわざ植わってる植物園を探して訪ねたのって何年前の春だろう。

今日入力した伝票の番号が「2022020202」でなんだか嬉しかった。鶏むね肉を蒸すのがブーム、なかなか上手でしょってしたり顔を見せたい、不安定な眉を整えにゆく予定を入れた。

 

「偽りだらけのこの世界で愛をまだ信じてる」って歌に乗せるなら誰も笑わないからいいな。一生懸命繋ぎとめてきた、あらゆる蝶番を保とうとした、でもがたついてるしもう繋ぎとめられる気がしない。だったらわたしが落ちて壊れたら他のなにも壊れなくていいのではないか。それは怠慢ですか? 絶対に壊れないであり続けろと何度でも歌うよ、そう歌っていた、とこよのこうごうではきかぬひがんのうみにはねおんらいとみなぎるせいめいのじょうきにひかるあじあのほしになりたいかぜがでてうすいはながらはしみてあさにはうそになるからまほろばにけひにべんてんにさけぶぼくはあじあのうたひめ、気づいたら歌ってしまうなぞってしまう、ああ。

拡声器がなくてもわたしはここで叫び散らかしてゆくのだ。

美しい言葉の連なりたくさん知ってる、それを繋げる唇や指先の存在に思いをはせる。わたしの唇や指先はどんなかたちをしているのだろうか。

 

気まずそうに口をつぐんでうまく話せないで笑ってる。そうやって引く線が少し鋭くなったように思う。話をしたい、誰でもいいわけじゃない、どうしようもなくて無責任な笑い声を聴いて意識を遠ざける。通じたいという願い、祈り、膝をついて乞う。自分から掴まないと何も起きない、わたしは手を伸ばされる側じゃない。でもどうか泣かないで、泣いてもいいけど足を止めないで。泣きながら走れないとかぬるいこというやつは瞼にワイパー貼り付けてから出直してきて。暗がりの中でも走り続けるでしょ、だって道が明るかったことなんて一度だってないじゃんか、そういうのが生命の健気さだって思うんだよ。