餓えた腹には清潔なミルクを

 

いまは妙に穏やかな気持ちで。

わたしは……って言葉じゃなくて態度で示せって話。さっさと恰好良くいろって話。立ち上がりが遅い、頭を使うのって本当に得意じゃない。

 

あなたが抱えているものはわたしに手の届くものじゃなくて
そもそも誰にも触らせたくないものだろうし
それでも、触れなくても、わたしは自分であなたの隣を選んで、あなたの隣にいたい。
あなただけを選びたい。
そのために捨てたい、捨てられる。あなたのことは捨てられないけどね。

 

わたしの心はもうあげた。
あなたを繋ぎ止めたくて耳障りのいい言葉を並べたこともない。

それが本当じゃないというのなら、もっときちんと示さなくちゃいけないね。
でも生きているだけで示せるってわかる。
わたしは真から思ったことしか口にしていないから。

 

きちんと届くかたちをしていなくて、淋しい気持ちにさせてごめんね。
あなたは何も許さなくていい、物分りの良いふりしなくていい。誰に愛を囁いたって構わない。
信じられない嘘つきだって、そして気が済むまで試したらいい、わたしの閾値、死線。
その目で見て、がちゃがちゃの目でよく見て、この愛の性質。忘れないで、ううん忘れてもいい、何度でも教えてあげる。

 

わたしはあなたを好きなだけ。
わたしがあなたを好きなだけ。

あなたのことを好きならわたしはいつだって走り出せる、あなたの言う通り、自分できちんとわかってる。

 

手が届かないような底の深い器に注ぎ続ける絶えない水、なけなしの光。全部全部あげる。わたしの目もえぐりとってあげる。自分が見た光だって全部あげる。

物分りのいい振りするあなたも横暴なあなたも、全部全部、今日のあなたがいちばん好きだよ。
今日そこで呼吸をして水飲んでご飯食べてお風呂に入るあなたがいちばん好き。

 

高架に佇む恋人へ、次はわたしがのたうち回る番。
今月は毎日完全数がつくから、わたしはとても調子がいい。

雨の音がするたびにその手首を掴みたいって考えている気がする。
気色悪かったら蹴っ飛ばしてくれて構わない、きちんとそばに戻ってくる。何度だって溶鉱炉に沈んで、あなたに沈んで、かたちを変えて、しゅうねくそばに。

 

迷子みたいなあなたの手を引いて、誰にも見つからない場所まで行こう。神様の目にも届かない場所で、ふたりぼっちで扉を締めて。換気をしても湿度の高い部屋で、欲しい物全部全部あげる。

 

「信じて」で信じられるならもっと楽に生きてるんだよって呪詛を吐いても構わない、信じられないあなたをわたしはずっと抱き締める。信じてもらえなくても、信用なんてひとつもなくても。安っぽいにんげんで恥ずかしいね。

わたしが愛しているのはあなただよ。あなただけ。何度も忘れても構わない、わたしに触れるたび、あなたは何度でも思い知る。思い知るまでやめるつもりがないからね。