秋の鼓膜に母乳を注ぐ

 

鋭角が足りない。もっと鋭くありたい、鈍角だと何も引っ掛からないし滑っていってしまうよ。自分にすぐ飽きる、金髪にするようにピアスをあけるようにタトゥーをいれるように体型を変えたい、綺麗になりたい。こないだ見つけた青いワンピースを買おうか悩んでいるって言いつつ、気持ちの上では完全に買う方向でいて、あれは体型が綺麗なら綺麗なだけ映えるからもっと見たことない身体になろう、三大欲求からどんどん削いでゆこう、まだもっと絞れる。要らないものが多すぎる。自分に飽きると言うからには中身にも当然飽きてしまった、この辺り何度焼き増せば気が済むの、好きなことは何度でも言えばいいけど言うことが変わらないなんてつまらない。そういう一貫して筋の通った佇まいのことは格好いいって思うけど、わたし自身には飽きてしまった。筋も肉もぶちぶち千切ってゆくのがよくて、脳の中で知らない何かがドバドバ放出されてゆく。ひとからどう見えてるか知らないけど、勝ち気というより負けん気が強い瞬間2021みたいな風がびゅーんと吹いて自分でも小気味よい。絶対負けないっていうか勝つ、それも気持ちよく。とにかくもっと鋭くありたい、もっと鋭く、とにかく鋭く、臨戦態勢を解除した覚えなんてなかったのにどうしてこんなにてざわりがひらがななの? えくすくらめーしょんまーくのきょくせんばかりがめにつくね? こんな遊びもつまらない、もっとよく見て、血管が千切れて視力がなくなるまで眼圧を上げてみせて、音をずらりと並べて頭のなかにエフェクターボードみたいに、その中央でステップ踏みながら鮮やかに鳴らそうよ。もっと尖らせて鋭くして研いで爪噛んで泣いて韻なんて踏んでないで頭使って、意地でもはみ出て、わたしはここにいたいわけじゃない。抜けて。自分なんて置き去りにしてもっと走って。なりたいものになりにゆく。抜けて。抜いて、わたしはわたしでわたしを抜いて。死ぬまで不器用に踊り続けるし、貧血気味の視界から見える世界の色にいつまでも名前を与え続ける。