溢れて還らないでいい

 

ふいに「未来まで待ちぶせしてしまうくらいに光のにおいする方走って行くんだ」という一節が頭をよぎった。
小学生のときから好きだとあらゆる場所で公言するくらいには見境なく、今に至るまで続く呪い。そう、呪い。

苦しいからといって捨て置けるようなものではなかった。好きな気持ちをないことにはできない。
手放せないから呪いなのだけれど。

 

この曲はどこをとっても好き。英語がちょっとおかしいっぽいこと以外概ね好き。
口ずさみ続ける、ずるりと違う部分も出てきて、

「運命が僕を追いかけるくらいに清潔な衝動に正直でいたいんだ」

息が詰まった。

 

わたしは知っている、愚直にそのように生きているひとを知っている。

わからない、けどわかりたい。見てみたい景色を伝えてくれる。
芯からわかることなんてできないかもしれない、それでも同じ景色を見ようと背伸びしたり覗き込んだりすることはできる。トレスできないことなんてない、向こう見ずな自信ひとつでどうにか今日もここに立っている。

 

また深い呪いにかかるためのミュージック。
何度も何度も聴いた曲を、それでも初めて聴いたことしかない。そうでないとおかしい、だって飽きずに風が冷たくておいしい。ガブガブ飲んで肺を膨らます。そのうち気泡が血管に交じって死ぬ。

初めて見る景色を見たい。

 

置き去りにしたくなくて抱えながら走りぬいてきたけれど、これをここに置いていくよもう。どこまでできるかわからないけどやってみる。
汚れのない先で、初めて会うんだきっと。ぐるぐると。素直であれば問題ない、わたしも素直にざらざら吐いた。

軸が伝わってないって言うけどさ、悪意のなさはよくわかる。素直であること、嘘のないこと、だからわたしも素直にいる。そうやってざくざくしながら互いの輪郭を見ている、流れる血に濡れる肌を見ている。