夏至というのはわたしのアンテナに太陽が漸近してばちばちに焦がされる日のことだ。気違う夏の最初の頂点がここにある。 結局、わたしがどんな環境でどんなことを考えているとしても関係ない。 わたしには好きなひとをちゃんと抱き締められる腕と、話を聞き…
報われまくると思って生きてきてないけど、全方位報われないとさすがに落ち込む。無欲になることはたぶん案外簡単だけれど、自我を残したまま至るのは難しい。放っておいたってこんな風に夏に至るけれど、わたしはずっと中途で膝を抱えて音楽を聴いている。…
2000字を静かに沈めたあとも湖面は静かだ 知ってる、わたしはうわてでおとなだから。 ところで歌舞伎町が本当にゴミみたいだった。でも前からそう、そしてここはもはやわたしの出身地でもある。歌舞伎がゴミクズであればあるほど笑いが止まらなくなるし、わ…
友人はどうやらわたしの記憶力の低さを知らないまま今に至っているらしい。へんな感じ。 日頃の会話では「覚えてないや」「なんの話だっけ」「この話前もしたっけ」、そんな言葉ばかり使っている。しばしば呆れられるがどうせ直らないので謝らない。楽しい話…
「決断する」という意味の動詞decideがあるけれど、このcideはsuicideやgenocideのcideと同じで殺すという意味を帯びているらしい。つまり、何かを決める・選択するということは、その他の選択肢を殺すということと同義なのだと、英語教師が口にした話をまだ…
左手に掴めそうな海、あなたの髪が茶色に透ける程度の色素量が潮を含んでかさを増してゆく。嘘をついてでもあなたが増えると嬉しい。いないひとの不在さえ愛せる気がして心臓の窓を開け放ってはためくカーテン、けむくじゃらの小さな蜂が迷い込んで大動脈の…
展開がないなんてつまらない。どう転がったって新しい色を見られるって信じてるから指先でくるくるってするしそのせいでマニキュア乾く前にぐしゃってしちゃう。でも同じ色が塗りたいなら過去の自分にシールでも作ってもらってそれ貼ってたらいいじゃん、皮…
気に入っている水色を引き延ばして表示させたら青色にしか見えなかった。 そのときのわたしは面喰ったのは「こいはみずいろ」と訳した瞬間がかつて存在したせい。恋の色には見えなかったが、とはいえL'amour est bleu、結局恋の色だったのかもね。まあなんで…
重なってじりじり動いて生じた摩擦熱で削れた肌の色合いに、焦げ消えてもうすっかりなくなったものを見た。 フォークの刃先を押し当てたかたちにとける氷が愛おしい。わたしの手のひらから伝ってゆく熱がそうして変質させてゆく。 いつまでも同じ熱を押し当…
ジュッ から始まる文章を書こうと思ったのだけれど、ここまで書いて筆をおいた。言いたかったことの軸足がすとんと落ちた、着地した。いま他に言いたいことはもうないってわかる からからの指 ジュッ あと全部蛇足に思えるからとりまバッサリ切っとけ。切っ…
1時間おきに目が覚める。毎度毎度、意識の縁がぴんと鋭く立っていたため、脳を何度も切っては気絶した。出血多量でふらついて動けなかった朝、ようやく身体を縦に持っていったときには気づかなかったが、外に出てみたら世界が動いていなかった。なすすべもな…
「世界にゃ同じ顔の人が3人おるらしいの」 「それな、全部で3人じゃけ」「そうなんよ。え?結局何を言いたいん??」 「もうひとりに会いたい」 「物好きか」「ロマンチストって言うてえや」 「それが獰猛な殺し屋でも、お前はそう言うん?」「ロマンチスト…
わたしはひとりで完璧に完成している。その中身をだらだら垂れ流して文学的とか言われる趣味はまじでミリもないっていうか悪趣味な仕立て直しをする暇こそまったくないんだけど、心臓を吐きそうな感覚になって嘔吐しても胃液まみれの冷たい沈黙と空洞みたい…
実現しなくてきりきりするけれどとにかく感覚を取り戻さないと、それこそ死んでしまうよ。 あくびする猫みたいだと思う。90度で締め付けられて空転甚だしい。そして土足でねじ込まれて痛む場所がどこかも特定できない。遠くから聞こえる水の音のような響きの…
ばらばらになりそうなものを別にここで繋ぎ止めてない、重なったり離れたりそういうあそび・ゆとり・ふくみの部分として機能するわたくし 何が痛いのかわからない 見えなくなってしまったから理解した、死ぬほど好きじゃないから死ぬ気になれない、首を絞め…
目の裏側にゴリゴリやすりを掛けられていて額の裏が嫌な感じだ。 だとしたらそれはわたしの責任ではない、という言葉を飲み込む。イーブンにはならないってわかっている。 イーブンになるんだったら誰もかれもこんなことにはなっていなくて、それでも条件を…
ここは風通しが良くていろいろなものがよく見えます。こうやって画面を見もせず何も考えず指が動くがままに文字打っています。それでいいんです、少なくとも今日いまここにこうやって書いて生きていることを残そうと思えることがわたしは嬉しいから。 今年あ…
どうもひとに好かれるような文章じゃないから、そちらの眼球こそぐるぐる回転してしまっていますか。唇にあぶら取り紙を挟んで多く塗りすぎてしまった口紅をやさしく剥ぐように、日々の微小な震えをそっと感知して写し取っています。 鼓動が三拍子で脈がない…
あなたに背中を向けたのはこの12年余りで、つまり人生で初めてのことだった。常に眼差しの対象だから外すことなど考えもしなかった、それでも背を向けて飛び降りた、流水の中の砂金を掴むくらいの無謀さを持っていたために。ほんの5分余りの出来事。背中を向…
ラメの日。大きく横に開く口だから笑うたびに花が咲くようで、嬉しくて泣けてしまう。何色が見たい?と聞いたのは半ば苦肉の策だったけれど、紫だと即答するものだから。バッグ、ピアス、ベルト。次々にものが壊れる日だった。加えて、そこに合わせてスキン…
うだる日々と畳の感触、だらしなく寝そべる退屈の最中、立ち上るという動詞には似つかわしくないほどに燦然と立ち上った。短い詩の映る液晶画面、ゴシック体。火であり水であった。白さに胸が焦げ、青さに夢中になる。火にしても水にしてもひとつ極まったと…
無害で平坦なにんげんの生活に慣れることなんて絶対にしないで、生々しく賭けて駆け続ける畜生の日々を送って。ここ以外で喉を枯らさないで、ここ以外で膝をついても何事もなかったふりをして。血を流して泣くのは痛いからじゃない、血が流れたことが悔しい…
ねえ、わたしはあなたに絶対勝ちたいんだよね。だってあなたのことが性懲りもなく好きだから。見つけてよ、負かすためのものは揃えようと思ってる。 あなたの作品のことが大好きだから、見つけたらわたしはすぐわかってしまうし好きになってしまうだろうな。…
ねえ、あなた緩やかに殺しているよ、と髪を乾かしそびれた女が指摘する。やっぱりそう思う?と首を傾げてから、でもそれちょっと違うんだよねと微笑んで返すのも女だ。少し眠っているだけで、そんな風に損なわれて見えるのならあなたは短絡的すぎると主張す…
「半分に割った赤いリンゴのイビツな方」はわたしが貰うのだけれど、それでも綺麗に割れたほうを笑顔で受け取っておいて違うひとにプレゼントするのはやめてよって思う。わたしはあなたにあげたのだ、他の誰かになんてあげないでよ。 いちばんおいしいところ…
言葉の動脈が見える、切ったらたくさんの血が流れる部分を撫でる。見えますか、肺に溜まる切実は吸っても吐いても出ていかない。胸に留めておくの。極彩色は最後にぶちかますのが鮮やかだし、そのフラッシュで目を潰してしまいたい。衝迫、ああ溶解。 見えた…
虚像ではなくて鏡像、鏡です。どういうことなのと叩かれて割れてみれば、ひっそりと無限の虚空がみちていました。きらきらと鏡が降ります。それだけのことです。外には何の秘密もないのでした。あなたの手は血塗れで、そのひと本当はいなかった、誰の夢なの…
なまぬるいことばっかぴーちくぱーちくってる暇あったら本読んで過ごそ、首を吊る以外の方法で背も伸ばそ。倫理も論理も手薄だがそれに巻き取られるような身体は持ってない、持てなかった、違うやり方でいけってこと。自分の内側が見える気がするもっと澄め…
こんな夜に喉を割くための言葉を探してはイソジンごと飲み込んでいる。 今日は大した外出をしなかったからマスカラを塗らずアイシャドウと口紅だけで済ませた。使った3色のアイシャドウを片付けながら、思えばどれも紫に分類されるものだなと気づく。そもそ…
まずバスセンターでカレー。文字通り飛び乗って、空席はなかったから飛び降りた。だらっと歩いてバスセンター前述の通り、そういえばそのあと日付が変わる近くまで水以外の何も口にしていなかった。20時に建物の外に出たら眼前の信濃川いっぱいの夕焼け、こ…